「会社員には傷病手当金と高額療養費制度があるから、医療保険は不要だ」という話を聞いたことがある方も多いと思います。
結論から言うと、会社員は他の職業と比べて医療保険の優先度が低くなりやすいのは事実です。ただし、どんな会社員でも不要というわけではありません。
この記事では、傷病手当金と高額療養費制度が実際にどこまで代替できるかを整理し、それでも医療保険が必要になる具体的な条件を説明します。
会社員が持つ2つの強力な公的保障
会社員(健康保険の被保険者)には、フリーランスや自営業者にはない2つの保障があります。
- 傷病手当金:病気・ケガで働けなくなったときの収入補填
- 高額療養費制度:医療費の自己負担に上限を設ける仕組み
この2つを正しく理解すると、民間の医療保険で何をカバーすべきかが見えてきます。
傷病手当金で「収入減」はどこまでカバーされる?
傷病手当金は、病気やケガで連続4日以上休んだ場合に、健康保険から支給される給付金です。
支給額と支給期間の目安
支給額の目安は、直近12か月の標準報酬月額の平均の3分の2です(支給開始日以前12か月間の平均標準報酬月額が基準となります。詳細な計算方法は傷病手当金の条件と金額の計算方法をご確認ください)。
支給期間は、支給開始日から通算1年6か月です(2022年1月以降、同一傷病での支給期間は通算1年6か月に変更されています。要確認:加入保険者の最新案内を確認してください)。
傷病手当金があっても「3分の1の収入減」は残る
傷病手当金は給与の約3分の2を補填しますが、残り3分の1は補填されません。月収30万円の方なら、毎月約10万円の収入が減る計算です。
また、以下の費用は傷病手当金でカバーされません。
- 入院中の差額ベッド代(個室・少人数部屋を使う場合)
- 入院中の食事代(標準負担額として自己負担が発生します)
- 保険診療外の先進医療・自由診療
高額療養費制度で「医療費」はどこまでカバーされる?
高額療養費制度は、1か月の医療費(保険診療分の自己負担)が一定額を超えると、超えた分が払い戻される制度です。
70歳未満の自己負担上限額(月額)の目安
所得区分ごとの上限は下表の通りです(現行制度の目安。見直し・年度変更があり得るため、最新情報は厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」でご確認ください)。
| 年収の目安 | 月の自己負担上限(目安) |
|---|---|
| 約370万〜770万円 | 80,100円+α |
| 〜約370万円 | 57,600円 |
| 住民税非課税 | 35,400円 |
年収370万〜770万円の会社員なら、どれだけ入院が長引いても1か月の医療費は最大約8万円に抑えられます。これは民間の医療保険で想定する入院費用の多くをカバーしています。
高額療養費でカバーされない費用
医療費の自己負担上限は抑えられますが、以下は対象外です。
- 差額ベッド代:個室・少人数部屋の場合、1日数千円〜数万円が別途かかります(金額は病院ごとに異なります)
- 入院時の食事代:一般所得者で1食あたり約490〜510円程度の自己負担が発生します(要確認:最新の標準負担額は厚生労働省告示を確認してください)
- 先進医療・自由診療:保険適用外の治療は全額自己負担です
それでも医療保険が必要になる3つの条件
傷病手当金と高額療養費制度で相当程度カバーできる会社員でも、以下の条件に当てはまる場合は医療保険の検討価値が上がります。
条件1:貯蓄が少ない
傷病手当金は、連続した3日間の休業(待期期間)が終わってから支給が始まります。待期期間中の収入補填はありません。また、差額ベッド代・食事代・収入の3分の1減少を自己資金でカバーできない場合、医療保険の給付金が生活費の補填として機能します。
目安として、50〜100万円以上の緊急予備費がある場合は医療保険の優先度が下がりやすいとされています(ただし、必要額は生活費や家族構成によって異なります)。
条件2:長期入院が想定されるリスクがある
高額療養費は月単位で上限が設定されます。複数月にわたる長期入院では、毎月の上限額が積み重なります。加えて差額ベッド代・食事代も月数分発生します。
がんの家族歴がある、持病があるなど長期入院リスクが高い場合は、医療保険の給付が実際に役立つ可能性があります。
条件3:個室・少人数部屋を希望する可能性がある
相部屋(大部屋)でよければ差額ベッド代はかかりません。しかし、子育て中で感染症リスクを下げたい、仕事上の都合で個室が必要などの事情がある場合は、差額ベッド代が意外と大きな出費になります。
差額ベッド代の負担が気になる場合は、医療保険の入院給付金で対応する方法があります。
会社員が医療保険を見直すときのチェックリスト
すでに医療保険に加入している会社員が見直す際に、以下を確認すると整理しやすいです。
- ✅ 傷病手当金の支給要件を確認しているか:業務外の病気・ケガで4日以上休業、かつ休業した日に給与が支払われていないことが主な条件。退職後に継続受給する場合は別途要件あり(要確認:加入している健康保険組合の規定を確認してください)
- ✅ 緊急予備費として50〜100万円以上あるか:あれば医療保険を優先しなくてよいケースが多い
- ✅ 入院給付金の日額は現実的か:差額ベッド代・食事代を賄える額かどうか
- ✅ 不要な特約がついていないか:使う可能性が低い特約は外すと保険料を下げられる
- ✅ 保険料と収入のバランスは適正か:月々の保険料が高い場合、その分を貯蓄に回す選択肢も検討する
「収入が減るリスク」が心配な場合は、医療保険より就業不能保険の検討を先にするのも一つの方法です。医療保険は治療費の補填が主な役割であり、長期の収入減補填は設計上の守備範囲が異なります(詳しくは会社員と就業不能保険の関係をご覧ください)。
まとめ:会社員は優先度を下げやすいが、条件次第では必要
会社員と医療保険の関係を整理すると、次のようになります。
- 傷病手当金で収入の約3分の2は補填できる(残り3分の1は自己負担)
- 高額療養費制度で月の医療費自己負担に上限がある(差額ベッド代・食事代は対象外)
- 貯蓄があり、相部屋入院でよく、収入減リスクが許容できる場合は医療保険の優先度が低い
- 貯蓄が少ない、個室を希望、長期入院リスクがある場合は検討価値が上がる
「医療保険は不要か」という問いへの答えは、会社員かどうかより、貯蓄・リスク許容度・家族構成によるというのが正確です。
医療保険の必要性を一般的な観点から整理した記事は医療保険は本当に必要か?もあわせてご覧ください。傷病手当金の詳細な条件と計算方法は傷病手当金の条件と金額の計算方法で解説しています。

